#38 毛髪病諸候 その11 鬼舐頭候

おはようございます。鍼灸師の速水です

本日は毛髪病諸候ラストになりますね

今日はこちら、『鬼舐頭候』です

鬼舐頭(きしとう)とは、今でいう円形脱毛症のことをさします

 

<原文>

人有風邪在於頭、有偏虚處、則髮禿落、肌肉枯死、或如錢大、或如指大、髮不生、亦不癢、故謂之鬼舐頭

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

人あり風邪頭にいる、ひとえに虚の所あり、すなわち髪禿げ落ちる、肌肉枯れて死に、或いは銭の大きさごとく、或いは指の大きさごとく、髪生えず、痒みはなし、故に鬼舐頭(きしとう)という

 

<通訳>

風邪が頭部にあり、たまたま頭部に気血が虚している部分があると、その部分の頭髪が禿げ落ちて筋肉が枯死するようになる。あるいは銅銭大に、あるいは指頭大に頭髪が生えず、髪もまたないものを鬼舐頭と称する

 

<考察>

「銅銭大に、あるいは指頭大に頭髪が生えず、髪もまたない」←この表現が円形脱毛症のことを指していますね

円形脱毛症を調べるといろんな種類があるそうですね

単発型
通常の円形脱毛症

多発型
円形脱毛症が2か所以上

多発融合型
びまん型…頭髪全体で平均的に多数の毛が抜ける症状
蛇行性 …蛇のように細長く脱毛する症状

全頭型
多発型から症例が進んだもので、脱毛部分同士がいくつも重なり合って髪の毛のみ全て抜け落ちる。近年、女性で急激に全頭性に脱毛し、頭部にかゆみが伴う

汎発型
ひげ・すね毛・陰毛など、身体のあらゆる体毛が抜けおちる症状。単発型からみるとかけ離れた症状であるが、いくつもの脱毛部分が重なって全身に及んでいることから紛れもない円形脱毛症である。治療の予後が悪いのもこのタイプ

 

原因としては、体の防御機能であるCD8陽性Tリンパ球が毛根部分の自己抗原(おそらくメラニン関連の蛋白)に誤って攻撃してしまういわゆる自己免疫反応によって引き起こされる自己免疫疾患

あと、アレルギーとの関連もあるそうですが、まだ私にはそういう症例の患者さんを診ていないのでなんとも言えないです( ´Д` )

 

さて、毛髪病諸候はこれにて終了になります。

んで、次回からは目病諸候をやってみたいと思います。患者さんの目をみると充血していていたり、白内障を患っている患者さんもいらっしゃるので目に関する病気を整理してみようと思いまして着手してみます

 

もし、他の病できになることがあれば随時コメントお願いいたします(p゚∀゚q)

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

円形脱毛症.com https://www.enkei-datsumou.com/

#37 毛髪病諸候 その10 白禿候、赤禿候

こんにちは、鍼灸師の速水です

昨日のセルフお灸の会をやってたので諸病源候論は休んじゃいました(ノω<;)

今日はこちら、『白禿候』、『赤禿候』です

白禿とは、頭部の白癬症のことを指し、その病原体は真菌類であり蟯虫(ぎょうちゅう)ではないそうです

赤禿は、日本語訳が省略されていますが、白禿候と似たことだと推測されます

では、読んでいきましょう( ´艸`)

 

 

<原文>

「白禿候」

凡人皆有九蟲在腹内、値血氣虚則能侵食、而蟯蟲發動、最能生瘡、乃成疽癬瘑疥之屬、無所不爲、言白禿者、皆由此蟲所作、謂在頭生瘡、有蟲、白痂、甚癢、其上髮並禿落不生、故謂之白禿

「赤禿候」

此由頭瘡、蟲食髮禿落、無白痂、有汁、皮赤、而癢、故謂之赤禿

 

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

「白禿候」

およそ人皆、腹内に虫が在りて9つあり、血気虚すれば浸食す、蟯虫(ぎょうちゅう)発動し、最も瘡(きず)生み、疽(そ、悪性の腫物)、癬(せん、かゆみを伴う皮膚病の一種)、瘑(か、傷の後にできる痕)、疥(はたけ、顔にまるい白い粉をふいたような斑紋(はんもん)ができる皮膚病)に屬す、なざるところ無し、白禿なる者、皆、この蟲のところの由、頭に瘡が生まれる、蟲有り、白く痂(か)せる、甚だしく癢(痒)い、その上髪禿げ落ち生えず、故に白禿と言う

 

「赤禿候」

此れ由しを頭に瘡(きず)、蟲髪を食べ禿げ落ちる、白く痂(か)せ無し、汁有り、皮赤し、しかし癢(痒)い、故に赤禿と言う

 

 

<通訳>

「白禿候」

人の腹中には九虫が寄生しており、血気が虚損している時には人体を浸食する。その中でも蟯虫が発動すれば最も瘡(きず)を生じ易くなり、疽(そ、悪性の腫物)、癬(せん、かゆみを伴う皮膚病の一種)、瘑(か、傷の後にできる痕)、疥(はたけ、顔にまるい白い粉をふいたような斑紋(はんもん)ができる皮膚病)の類の病症を形成するようになり、しかもそれらができないところはない。白禿が生じるのはこのような九虫によるものであり、頭部に虫がいて瘡(きず)を生じ、因って白痂を形成して非常に痒くなり、その瘡上の髪が全部脱落して生じなくなるので、これを白禿と称する。

 

「赤禿候」

省略されてました

 

 

<考察>

「白禿候」の最初は腹の中に9つの虫がいると書いてますが、9つの虫については記載してませんね。血気が虚損して、蟯虫が発生すると皮膚に関する症状が頭にもでるそうですが、最初にも記載してますが、白禿とは、頭部の白癬症のことを指し、その病原体は真菌類であり蟯虫(ぎょうちゅう)ではないそうです。

私なりに九虫が気になって調べてみると、『三尸九虫(さんしきゅうちゅう)』というキーワードがヒットしまして、具体的なのを調べると中国の道教の考え方のひとつで、三尸(さんし)とは人の体には 3 匹の虫が棲んでいるという考え方があります。

上尸 (じょうし), 中尸 (ちゅうし), 下尸 (げし) という 3 匹の虫で,いつも人の行動を監視していて,庚申 (こうしん/かのえさる) の日になると,眠っている人の体から抜け出して,その人が犯した罪を天帝に告げ口してしまいます。日本では,昔,それらの虫に告げ口されないようにと,庚申の日の夜は,みんなで集まって眠らないようにする 「庚申待ち」 という催しがされたりしました。で,この三尸には,それぞれ同類がいて合わせて 9 匹の虫がいるとされています。その 「三尸九虫」 が,私たちの体内で,私たちの感情や意識をコントロールしていると考えられているのです。怒りとか不満などの感情の高まりを, 「誰のせい」 とはっきり言わないで, 「虫のせい」 として使っていますよね。これって内因(ないいん)という精神活動が過度に強烈で長時間続くと病気になることに似ているかもですね。ただ、「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」の7種なんですけどね(汗)

仮説ですけど、九虫≒内因として、血気が虚損することで五臓にも影響がでて真菌類が頭皮にもでて、白く痒くなるのが白禿候、白くなく汁が出て皮膚赤く痒くなるのが赤禿候と整理されるのかなと思います(これはあくまで私の考えですよ(汗))

 

もし、九虫についてご存じの方は教えていただけると助かります(*゚▽゚*)

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

語源 【虫がいい/虫の知らせ/虫が好かない/腹の虫がおさまらない/虫の居どころが悪い】
https://s.webry.info/sp/mobility-8074.at.webry.info/201702/article_2.html

#35 毛髪病諸候 その9 令毛髪不生候

夜分どうも、鍼灸師の速水です

なかなか寝れないのでブログを書いてみました

今日はこちら、『令毛髪不生候』です

 

<原文>

足少陰之血氣、其華在髮、足太陽之血氣盛、則眉美、足少陽之血氣盛、則鬚美、足陽明之血盛、則髮美、手陽明之血氣盛、則髭美、諸經血氣盛、則眉髭鬚髮美澤、若虚少枯竭、則變黄、白悴禿、若風邪乘其經絡、血氣攻變、則異毛惡髮妄生也、則須以藥傅、令不生也

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

足少陰の血気、その(五)華は髪にあり、足太陽の血気盛んなれば、すなわち眉美しい、足少陽の血気盛んなれば、すなわち鬚美しい、足陽明の血盛んなれば、すなわち髪美しい、手陽明の血気盛んなれば、すなわち髭美しい、これ経血気盛んなれば、すなわち眉髭鬚髪美しくうるおう、もし虚少枯渇すれば、すなわち黄色に変(化)する、白くやつれ禿る、もし風邪がその経絡に乗ずれば、血気攻めに変(化)し、すなわち毛異なり髪悪しみだりに生えるなり、すなわち薬をもってつたえる、生えずなり

 

<通訳>

まさかの省略∑(゚Д゚ )。微妙ですが、書下し文でなんとなくイメージできたらなぁと思います

 

<考察>

今まで述べた髪、鬚、髭、眉の総まとめで記載してますね。

今までのを整理すると

髪        → 足の少陰腎経

鬚(あごひげ) → 足の少陽胆経

髭(くちひげ) → 手の陽明大腸経

眉        → 足の太陽膀胱経

 

ただ気になるのがありまして

足陽明之血盛、則髮美

足の陽明とは「足の陽明胃経」のことを指し、足の陽明胃経が血(気)盛んであれべ、髪美しいと記載されています

 

前回   髪 → 足の少陰腎経

今回   髪 → 足の陽明胃経

 

むむむ└(゚ロ゚;)┘ な、なぜ異なるのでしょうね?

 

考えられるものとしては(あくまで推測ですけど)

(1) 誤字

→ 諸病源候論にて、「足陽明之血盛」と検索しても「令毛髪不生候」のみヒット、「足陽明之」で検索しても髪に該当する箇所なし

 

(2) 髪ではなく額の生え際では?

→ 足の陽明胃経の経絡が以下の通りです

鼻根に起こり下って鼻の外(承泣穴、四白穴、巨髎穴)を循り、上歯の中に入り、還り出て唇を循り、下って承漿穴で左右が交わる。ついで下顎下縁を循り大迎穴から頬車穴を循り、耳前に上り客主人穴を過ぎ、側頭髪際を循り額顱に至るその支なるものは、大迎穴の前より人迎穴に下り、喉嚨を循り缺盆穴に入り、膈を下って胃に属し脾を絡う。その直行するものは、缺盆穴より乳の内廉に下り、下って臍を挾み気衝穴に入る。気衝穴から大腿前外側を下り、膝関節を循り、下腿前外側を下り、足の第2指外端に終わる。その支なるものは、胃口の下に起こり、腹中を循り下って気衝穴に合す。その支なるものは三里穴の下方から分れ、下腿外側(胃経と胆経の間)を下り豊隆穴を経て足の第3指に行く。その支なるものは、衝陽穴から別れて第1指に至り、足の太陰脾経に連なる。

側頭髪際を循り額顱に至る これの事なのかなと

 

え~と、私一人ではなんとも言えないので(笑)、有識者の知識をお借りしたいです(^-^)

古典は色々と考えさせてくれるので、迷うこともありますが考えるきっかけになるので勉強になります( ´ー`)ノ

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

#34 毛髪病諸候 その8 火焼処髪不生候

おはようございます。鍼灸師の速水です。

最近、同業の先生方もこのブログを読んでいただけているので、かなり恐縮ですが、いろいろ意見などが聞けたらもっと内容の濃いブログになりますのでお待ちしております(σ゚∀゚)σ

今日はこちら、『火焼処髪不生候』です

火焼は、火傷(やけど)ですね。つまり、火傷の処(ところ)は髪が生えずという解説になります

 

<原文>

夫髮之生、血氣所潤養也、火燒之處、瘡痕緻密、則氣血下沈、不能榮宣腠理、故髮不生

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

それ髪の生えるのは、血気が潤養の所なり、火傷のところ、瘡(は)れた痕緻密、血気下がり沈む、腠理栄えることあたわず、ゆえに髪生えず

 

<通訳>

毛髪の生長は血気の滋潤と栄養によるものである。火傷したところは瘢痕化(はんこんか)した皮膚は硬くて柔軟性がなく、その部分では気血が下に沈んでいるので腠理(そうり、皮膚の表面と筋肉の間)を栄養することができず、発汗も起こらないし、毛髪を生じない。

 

<考察>

火傷は4段階まであります

Ⅰ度熱傷    (深さは表皮まで、発赤、数日で治癒)

浅達性II度熱傷(深さは真皮浅層まで、水疱、2~3週で治癒)

深達性II度熱傷(深さは真皮深層まで、水疱、4~5週で治癒、場合により植皮術)

Ⅲ度熱傷    (深さは皮膚全層、羊皮紙用・痛みなし、原則的に植皮術)

腠理(そうり、皮膚の表面と筋肉の間)の意味で言うと、上の火傷の深さだと、ⅠからⅢ度熱傷すべてに該当ししそうですね。ただ、火傷の深刻度で言うと、当時、皮膚移植ができてたか定かではないので、深達性II度熱傷、Ⅲ度熱傷になると髪は生えないと思われます。浅達性II度熱傷は水疱中は生えずらいのかもしれませんね(゚Д゚;)

 

ちなみに、お灸の熱量から言うと、Ⅰ度熱傷にまでなるかならないかぐらいです

ただ、その人の体調によるのでⅠ度熱傷、浅達性II度熱傷になる可能性もあることも知っておいた方がいいです。鍼灸師は体調にあわせて、お灸の壮数(すえる数)を調整できるので安心してください∑d(゚∀゚d)

お灸はあつければ良いというわけではないですヽ(´ー`)ノ ほどよい温熱でツボをあたためることが大事なのです。(場合によっては(稀ですけど)、熱いのも必要な時もありますけどね)

 

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

熱傷用語集2015改訂版(一般社団法人日本熱傷学会.2015)p.51

#33 毛髪病諸候 その7 令生眉毛候

おはようございます。鍼灸師速水です。

今日はこちら、『令生眉毛候』です

髪、ひげに次ぐ眉毛が生えるについてです(*^-^*)

 

<原文>

足太陽之經、其脈起於目内眥、上額交巔、血氣盛、則眉美有亳、血少則眉惡、又眉爲風邪所傷、則眉脱、皆是血氣傷損、不能榮養、故須以藥生之

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

足太陽の経、その脈は目の内眦(ないさい、目頭)に起こり、額を上り巔(いただき)に交じる、血気盛んなれば、眉美しく長くて丈夫である、血少なければ眉悪し、また眉風邪により傷つけば、眉脱(毛)する、これはみな血気が損傷し、栄養あたわず、故に薬をもって生じさせる

 

<通訳>

足太陽膀胱の経脈は目の内角に起こり額部に上り頭頂部で督脈と交会する。足太陽経の血気が充盛であれば眉毛は美麗で長くて亳毛が発達しているが、もしも血気が衰少すれば眉毛は醜悪となる。また眉毛が風邪によって傷されて脱落することがあるが、これもその実は風邪が血気を損傷させたために、血気が眉毛を栄養することができなくなって起こったものである。そのような場合は必ず適切な薬物療法をすれば眉毛は生じるようにになる。

 

<考察>

髪が足の少陰腎経、

ひげは足の少陽胆経、

そして、今回、眉は足の太陽膀胱経と関係していますね

亳=この諸病源候論の解釈では、長くて丈夫という意味

風邪がひいたときに眉毛がぬけるかもしれないんですね(汗)なったことがないのでどんなに抜けるんだろう( ゚д゚ ;)

ここでも適切な薬物と書いてますが、詳細は書いてませんね。太陽病(陽の病がはじまる、風邪の引き始め)と仮定したら、汗がでるがでないかによって薬も変わります

汗がでない Lv4 大青竜湯

汗がでない Lv3 麻黄湯

汗がでない Lv2 葛根湯

汗がでない Lv1 越婢湯

中間        桂枝麻黄各半湯

汗がでる Lv1  桂枝二超婢一湯

汗がでる Lv2 小青竜湯

汗がでる Lv3 桂枝湯

汗がでる Lv4 香蘇散

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

JINブックス 絵でみる 和漢診療学 寺澤 捷年 著

#32 毛髪病諸候 その6 髪黄候、鬚黄候

こんばんは、鍼灸師の速水です

さて、本日は二本立て

今日は『髪黄候』、『鬚黄候』です。

髪の毛と鬚(あごひげ)が黄色になることについてです。あまり自然に黄色になるって見たことがないのでどんな感じなのかわかりませんが読んでみましょう

 

<原文>

「髪黄候」

足少陰之經血、外養於髮、血氣盛、髮則潤黑、虚竭者不能榮髮、故令髮變黄

 

「鬚黄候」

足太陽之經血、外榮於鬚、血氣盛、鬚則美而長、若虚少不足、不能榮潤於外、故令鬚黄

 

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

「髪黄候」

足少陰の経血、髪の外養う、血気盛んなれば、髪すなわち黒く潤す、虚竭(きょけつ)なる者、髪栄えることあたわず、ゆえに髪黄(色)に変しむ

 

「鬚黄候」

足少陽の経血、鬚の外栄える、血気盛んなれば、鬚すなわち美しく長い、もし虚少く足りずなれば、外栄潤することあたわず、ゆえに鬚黄(色)になる。

 

 

<通訳>

「髪黄候」

足少陰腎の経血は頭髪を栄養している。もし血気が充盛であれば頭髪は潤沢で黒いが、虚竭(きょけつ)すれば頭髪は栄養されなくなって枯れて黄色に変じる。

 

「鬚黄候」

足少陽胆の経血は外は鬚を栄養している。血気が盛んであれば鬚は美しくて長いが、もし足少陽胆の経血が不足すると外を栄養することができなくなるので、鬚は枯れて黄色に変じる。

 

 

<考察>

前回の 「#27 毛髪病諸候 その1 白髪候」 で、白くなる話はありましたが、白か黄色って血気の量によって色が異なると思いますが、どこまでなのかは記載していませんね(;゚∀゚)

 

ちなみに、黄髪を辞典で調べると

老人の髪の毛。白髪がさらに黄色味をおびた髪 by デジタル大辞泉

 

髪の色で調べると

加齢による髪の色の変化は、毛根でメラニンの生産が中止された後も、色素なしで新しい髪が伸びることで、髪の色素がゆるやかに減少していくために起こる。Bcl2とMitfの二つの遺伝子が、白髪の発生の過程に関係していると考えられている。毛嚢の基部にある幹細胞が、毛髪や肌の色素の生産と保持を行う細胞であるメラノサイトの発生を受け持っている。メラノサイトを生み出す幹細胞の死により、毛髪は白髪に変化し始める

白髪の手前が黄髪(銀髪or金髪)みたいになるのかなと思います。

この古典は中国が発祥なので、黒色から始まり黄色を経て白色になるんでしょうね

鬚も同様に考えられます

 

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

デジタル大辞泉

^ Nishimura EK, Granter SR, Fisher DE (2005). “Mechanisms of hair greying: Incomplete melanocyte stem cell maintenance in the niche”. Science 307 (5710): 720-4. PMID 15618488.

#31 毛髪病諸候 その5 令髪潤沢候

こんにちは。鍼灸師の速水です

さて、本日はこちら

今日は『令髪潤沢候』です

「髪が潤沢になるとは」の説明ですね、前回の「#30 毛髪病諸候 その4 令長髪候」 と内容は似ていますね

 

<原文>

足少陰之經血、外養於髮、血氣盛、髮則光潤、若虚則血不能養髮、故髮無潤澤也、則須以藥令潤澤之

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

足少陰の経血、外は髪を養う、血気盛んなれば、髪すなわち光潤、もし、虚なればすなわち血、髪を養うことあたわず、故に髪潤沢無しなり、薬をもって潤沢にせしむ

 

<通訳>

足の少陰腎経の経血は頭髪を栄養する。血気が充盛であれば経脈の精気はよく外を栄えさせるので頭髪は光沢があって滋潤されている。もし、血気が虚損していれば頭髪を栄養することができなくなり、そのために頭髪は光沢を失うようになる。そのような場合は適切な薬物でもって治療して頭髪の滋潤光沢を回復させるように努めるべきである

 

<考察>

内容は前回と一緒ですねq(q’∀`*)。

ただ、いつも疑問に思うんですが、足の少陰腎経の経脈図を見ると、髪まではいっていないんですよね∑(゚Д゚)。これはどのような説明になるんでしょうね?この問いに答えてくれる先生方、おまちしております ○| ̄|_

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

#30 毛髪病諸候 その4 令長髪候

おはようございます。鍼灸師の速水です

さて、本日はこちら

今日は『令長髪候』です

「髪が長くなるとは」の説明ですね

 

<原文>

髮是足少陰之經血所榮也、血氣盛、則髮長美、若血虚少、則髮不長、須以藥治之令長

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

髪これ足少陰の経、血栄える所なり、血気栄えれば、髪すなわち長く美しい、もし血、虚少していれば、髪すなわち長くならず、薬をもちいて長くせいむよう治す

 

<通訳>

頭髪は足少陰腎経の血気が滋養している。腎経の血気が充盛であれば頭髪は長くて美しい。もしも血気が衰少すると頭髪は生じにくくなる。薬物を用いて治療して頭髪を生長させるべきである。

 

<考察>

「#27 毛髪病諸候 その1 白髪候」 でも述べましたが、腎と髪は関連がありますね。腎経の血気によって生えるか生えないか。弱くなれば薬物をって書いてますが、具体的な薬は書いていませんね。「血」「腎」を補う代表的な漢方薬は、牛車腎気丸、八味地黄丸、六味地黄丸です。

牛車腎気丸 - 牛膝 - 車前子 = 八味地黄丸

八味地黄丸 - 桂皮(ケイヒ) - 附子(ブシ) = 六味地黄丸

だったかな。漢方はさほど詳しくは分からないので漢方医に聞くのが一番ですけどね。薬の代わりではないですが、鍼灸でも腎経の血気を補うことは可能です。

 

だんだんと寒くなってくると血気が衰えやすくなるので、日ごろの養生(軽い運動など)も大事になりますヽ(´∀`)ノ

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

#29 毛髪病諸候 その3 令生髭候

おはようございます。鍼灸師の速水です。

札幌の今の気温は9° ∑(□`;) ついに、一桁台きました(・ω・`)

 

さて、今日は『令生髭候』です

髭はくちひげのことです。「髭が生えるとは」の説明ですね

 

<原文>

手陽明爲大腸之經、其支絡缺盆、上頸貫頰、入下齒間、髭者、是血氣之所生也、若手陽明之經血盛、則髭美而長、血氣衰少則不生

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

手の陽明大腸の経の為、その支(脈)は缺盆(けつぼん、つぼ名)を絡し、頸を上り頬を貫く、下歯の間に入る、髭なるもの、これ血気の所生じるなり、もし手の陽明の経盛んなれば、髭すなわち美しく長い、血気衰え脛くなければすねわち生えない

 

<通訳>

手陽明は大腸の経脈であり、その支脈は缺盆(けつぼん、つぼ名)に絡し、頸部に上り頬を貫いて下歯の間に入る。髭は血気を受けて生長するものであり、手陽明経脈の血気が充盛であれば髭は光沢があって美しくて長くなるが、もし血気が衰少すれば髭は生長することができなくなる。

 

<考察>

手の陽明大腸経の流注は、示指末端(商陽穴)に起こり、示指の橈側白肉際(肌目の際)を循り、第1中手骨と第2中手骨の間(合谷穴)に出て、前腕後外側を上り、肘窩横紋(肘の皺)の外端(曲池穴)に入る。上腕の外側を上行して、肩峰突起(肩の端にある盛り上がったところ)の外端の肩髃穴に至り、巨骨穴を過ぎ、大椎穴(督脈)に至って諸経と会する。大椎穴より下って鎖骨上窩(缺盆穴:足の陽明胃経)を経て肺を絡い、下って膈を貫き大腸に属する。

その支なるものは鎖骨上窩(缺盆穴)より別れて頸部(首)に上り、頬を貫いて下歯中に入り、還り出て左右に別れて口を挟み、鼻下の人中に交わり、左は右に、右は左に行き、すなわち左右交叉して、鼻孔を挟んで鼻翼両側(迎香穴)に終わる。ついで足の陽明胃経に連なる。

となっております。令生髭候のでてたのは「その支なるものは鎖骨上窩(缺盆穴)~」のところですね

 

口ひげ(髭)は手の陽明大腸経

顎ひげ(鬚)は足の少陽胆経

と場所によって経脈が栄養しているかによって生える生えないがわかれていることになりますね

 

三国志でおなじみ項羽のイメージって立派なひげがありますが、大腸も胆もすこぶる元気だったんでしょうね(σ゚∀゚)σ

 

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳

#28 毛髪病諸候 その2 鬚髮禿落候

こんばんは、鍼灸師の速水です

今日は午前中に訪問鍼灸を終わらせて久し振りに札幌へ行き、本屋さん巡りをしてました。

頭皮鍼、耳鍼に関する詳しい本を見つけたので、以前学んだことを思い返しながら読んでいこうと思います(p*’∀`*q)

さて、今日は『鬚髮禿落候』です

鬚髪(しゅはつ?)、(あご)ひげ+かみ が 禿落(はげおちる) 症状のことです

<原文>

足少陽膽之經也、其榮在鬚、足少陰腎之經也、其華在髮、衛任之脈、爲十二經之海、謂之血海、其別經上唇口、若血盛則榮於頭髮、故鬚髮美、若血氣衰弱、經脈虚竭、不能榮潤、故鬚髮禿落

養生方云、熱食汗出、勿湯風、令髮墮落、(其湯熨鍼石、別有正方、補養宣導、今附於後)

()部分は本の記載なし

養生方云、欲理髮、向王地、既櫛髮之始、而微咒曰、泥丸玄華、保精長存、左爲隱月、右爲日根、六合清煉、百神受恩、呪畢、嚥唾三過、能常行之、髮不落而生

又云、當數易櫛、櫛之取多、不得使痛、亦可令侍者櫛、取多、血液不滯、髮根常牢

 

<書下し文、自分でやっているので間違いがあります>

足の少陽は胆の経なり、それは髭(あごひげ)を栄える、足の少陰は腎の経なり、その華は髪にあり、衝任の脈、十二経の海の為、之(これ)を血海と謂う(いう)、その別経は口唇の上、もし、血盛んなればすなわち頭髪は栄える、故に髭髪は美しい、もし、血気衰弱すれば、経脈虚虧(きょき)し、栄潤あたわず、故に髭髪禿げ落ちる

養生方に云(い)う、熱いもの食べ汗出て、湯風勿(なか)れ、髪堕落せしむ、

養生方に云う、理髪を欲する、王地を向き、櫛髪のはじめに、微(かすか)に咒(のろ)いを曰う、(呪文は)「泥丸玄華、保精長存、左爲隱月、右爲日根、六合清煉、百神受恩」、咒畢(おわ)んぬ、唾三過嚥む、常に之れを行えば、髪落ちず生える

又云う、當(まさ)に数度櫛く易く、櫛の多く取り、痛を得ず、亦(また)侍者櫛すべき、多く取る、血液滞らず、髪根常に牢す

 

<通訳>

足の少陽は胆の経脈であり、その精気は鬚(あごひげ)を栄えさせる。足の少陰は腎の経脈であり、その精気は髪を栄えさせる。衝脈、任脈の二脈は十二経脈の海であり、血海と称され、その別絡は口唇に絡する。したがって諸経脈の気血が充盛していれば鬚髪を滋養することができるので鬚髪は光沢があって美しい、もし、血気が衰弱すれば経脈が虚虧(きょき)して鬚髪を栄養することができなくなり禿げ落ちるようになる。

養生方に云う、熱いものを食べて汗が出ている時に風に当たるべきでない、もしそうすれば頭髪が脱け落ちるであろう。

養生方に云う、調髪する時には東方を向いて坐り、櫛けずり始めるにあたって小声で呪文を称えるべきである。その呪文は「泥丸玄華、保精長存、左爲隱月、右爲日根、六合清煉、百神受恩」と称えるとよい。呪文を称え終わったら3回唾液を飲み込む。調髪の際にいつもこれを行えば頭髪はよく生えて脱け落ちることがない。

又云う、頭髪を梳くには櫛をたくさんとり易えながら何度も梳くことによって頭部の血流は停滞することなく、毛根は常に堅牢である。

 

<考察>

どなたか書下し文を教えていただけると助かります(´д`;)、難しいですね

腎は髪に関連していることは知っていましたが、鬚(あごひげ)が胆と関連しているのは初めてでした。腎、胆、衝脈、任脈が充実していると鬚と髪が滋養できると記載してますね

関連画像

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養生として、気をつけたほうがいい事ややったほうがいいことが記載されていますね

熱いものを食べて汗かいている時、けっこう風にあたりにいってるかも(汗)

養生で呪文もあるのははじめて知りました└(゚ロ゚;)┘「泥丸玄華、保精長存、左爲隱月、右爲日根、六合清煉、百神受恩」 う~ん、どういう意味なんでしょうね

昔からブラッシングの大事さも記載していますね

 

いまとなっては当たり前のことですが、その起源になりえることが記載しているのも感動ですヽ(* ‘ー’)ノ

 

「参考文献」

東洋医学概論  公益社団法人東洋療法学校協会 編 教科書執筆小委員会 著

講釈 諸病源候論 巣 元方 著  牟田 光一郎 訳